「もし、彼が貧しくて前記のものに手が届かないならば、自分の贖いの儀式のための奉納物として賠償の献げ物の雄羊一匹、更に穀物の献げ物のためにオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉十分の一エファ、及び一ログのオリーブ油を調える。」 レビ記14章21節

 14章には、重い皮膚病を患った人の「清めの儀式」についての規定が記されています。これは、重い皮膚病を癒すための儀式ではなく、重い皮膚病が癒された人を清めるための、即ち、社会生活に戻し、神を礼拝する民として整えるための儀式です。

 そのためにまず、祭司は患者の状態を調べます(3節)。患者は汚れているとされているため、宿営の外に留め置かれていますから、そこまで往診に行くわけです。そして、治っていれば、清めの儀式を行います(4節以下)。

 清めの儀式を行った後、その人は宿営に戻れますが、すぐには天幕に入れません(8節)。七日の間、家族などとの接触は禁じられているのです。七日目に第二の清めの儀式があり、それから社会生活に戻ることが出来ます(9節)。それでもまだ、聖なるものに触れることは禁じられていると考えられます。

 それで八日目、神の御前に賠償の献げ物、焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物をささげます(10節以下)。まずは、賠償の献げ物として雄羊一匹を、一ログのオリーブ油と共にささげます(12節)。

 このとき祭司は、雄羊の血を取り、清めの儀式を受ける者の右の耳たぶ、右手の親指、右足の親指に塗ります(14節)。これは、祭司を任職するときの儀式と似ています(8章23,24節、出エジプト記29章20節)。

 賠償の献げ物をするということは、重い皮膚病が単なる病気というのではなく、信仰上の汚れ、即ち、神に対する罪の結果と考えられていることを示しています。

 次いで、オリーブ油を主の前に振りまいた後(15,16節)、右の耳たぶ、右手の親指、右足の親指に塗り(17節)、更に頭にも塗ります(18節)。これも、祭司アロンの頭に油を注いで聖別したのに似て(8章12節、出エジプト記29章7節)、皮膚病の汚れから清められた人物を、更に聖別して、主に仕える者とするということです。

 最後に、焼き尽くす献げ物と穀物の献げ物を、祭壇で燃やして主にささげます。こうして、贖いの儀式を経て宗教的にも清い者となり(20節)、晴れて神の民イスラエルの一員として公私共に承認されるのです。

 21節以下には、貧しくて清めの儀式が出来ない人のための規定が記されます。焼き尽くす献げ物は、雄羊一匹、雌羊一匹を鳩2羽に替え、穀物の献げ物は、十分の三エファを十分の一エファに減量されています。貧しい人々に対する配慮は、1章14節以下、5章7節以下などにもありました。

 しかしながら、冒頭の言葉(21節)のとおり、賠償の献げ物としてささげられるのは、いずれも雄羊一匹です。5章14節以下に「賠償の献げ物」についての規定が記されていますが、すべて、雄羊の群れの中から相当額の無傷の雄羊をとってささげることになっていました。

 これは、人が罪を犯して汚れを負った場合、それから清められるのは、雄羊の血のほかにはないということです。ヘブライ書9章22節に、「血を流すことなしには罪の赦しはあり得ない」と言われるとおりです。

 ただ、重い皮膚病になったことは、罪の結果などではありません。癒されるまで社会生活から隔離されてきた方々が、清めの儀式のために賠償の献げ物をささげるというのは、どんなに大変なことだったろうと思います。

 彼らに代わって賠償の献げ物をささげてくださる方がなければ、もとの生活に戻れなかったかもしれません。洗礼者ヨハネは主イエスのことを、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ」(ヨハネ福音書1章29節)と言いました。神が御子キリストをこの世に遣わし、私たちのための贖いの供え物としてくだ下さったので、私たちはもはや、いけにえをささげる必要がなくなったのです。

 私たちはかつて、「わたしは汚れた者です」と呼ばわらなければならないような存在でしたが、今は、主イエスの血によって清められた者とされ、聖霊の力を受けて、主の恵みを証しし、福音を告げ知らせる務めに任じられました(ヘブライ書9章14節、使徒言行録1章12節、ヨハネ福音書15章16節、第二コリント書5章15節)。

 神の憐れみによって選ばれ、聖なる者とされているのですから、互いに愛し合い、忍び合い、赦し合って、キリストの平和が心を支配するようにしましょう。そのために、私たちは招かれて一つの体とされたのです(コロサイ書3章12節以下、15節)。

 主よ、あなたの御愛を感謝します。深い憐れみに感謝します。私たちを、御名のゆえに正しい道に導き返してくださいました。家族や知人をお与えくださって感謝します。日ごとの恵みを家族、友人と共に分かち合い、恵みの地境を広げさせてください。 アーメン