「神が(駝鳥に)知恵を貸し与えず、分別を分け与えなかったからだ。」 ヨブ記39章17節

 38章39節から39章30節まで、神はヨブの目を、地上の動物、空の鳥たちに向けさせます。獅子(38章39,40節)、烏(同41節)、山羊(1節a)、鹿(1節b以下)、野ろば(5節以下)、野牛(9節以下)、駝鳥(13節以下)、馬(19節以下)、鷹(26節)、鷲(27節以下)です。馬以外はすべて野生のものであり、馬は軍馬で、おとなしさとは無縁のものとして描かれています。

 これら鳥獣の生態については、殆ど何も知りません。ここに記されているのが、科学的に正確な描写であるのかどうかも分かりません。神が造られた動物で、その名を知っている動物であってもも、分からないことだらけです。

 獅子と烏についての描写(38章39~41節)と、鷹と鷲についての描写(39章26~30節)は、猛獣と猛禽の営巣、子育てに関する表現でこの箇所を括っており、それは、人に容易く飼い慣らされず、むしろ危害を加える力のある爪や牙、嘴に恐れと不安を感じるというものです。

 創世記1章26~30節には、海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配するものとして、人が創造されたことが記されています。その支配権は、神のかたちに造られたところにあると示されています。神は今、生物の支配者なる人間の代表者ヨブに対して、この目録を示しつつ、獅子や烏、鷹、鷲などを治めることができるのか、と挑戦しておられるかのようです。

 もっとも、創世記1章30節に、「地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草を食べさせよう」と記されており、その段階では、すべてのものがベジタリアンで、お互いに危険な存在ではなかったことが示されます。

 肉食が許されるのは、同9章3節で、箱舟を出たノアに対して、「動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしは、これらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える」と言われました。そのときから、動物が人を恐れるようになり、また、反撃するようになったということでしょう。

 イザヤ書11章6~9節に、肉食獣と草食動物、人と動物の関係が、創造当初の平和な関係に戻ったかのような預言が記されています。それは、平和の王に導かれた終末的な世界の状況でしょう。そのとき、あらためて人が彼らを治める支配者となるのでしょう。それはしかし、力による支配、恐れと恐怖をもたらす支配ではなく、「小さい子供がそれらを導く」(同6節)という、支配という言葉が似合わないほど穏やかな、やさしい支配です。

 ところで、ここに記されている動物の中で、駝鳥の評価が最低です。鳥なのに空は飛べませんし(13節)、卵は産みっぱなし(14,15節)、雛を守ろうともしない(16節)というように、ひどい言われようです。そして、その理由は、冒頭の言葉(17節)のとおり、神が駝鳥に知恵、分別を与えなかったからだと書かれております。

 それでも神は、駝鳥を見捨てられているわけではありません。駝鳥にも神の特別な配慮があるのです。駝鳥は強靱な脚力で、馬やその乗り手(人間)をあざ笑うかのような走りが出来ます。

 人間は、神のかたちに創造されており(創世記1章26節以下)、被造物の中の最高傑作だと言われます。だからといって、ここで評価の最も低い駝鳥を、自分の思い通りに動かすことなど、容易に出来るものではありません。

 神は何故、駝鳥のような鳥を創られたのでしょう。それは、神にしか分かりません。誰もその経綸を悟ることは出来ません。神に代わることは出来ないのです。

 以前、駝鳥の卵を使って鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の抗体を作ったというニュースを見ました。ウイルスを不活化する抗体をダチョウの卵から精製することに、京都府立大学生命環境科学研究科の塚本康浩教授のグループが成功し、実用販売されています。

 何でも、駝鳥は傷の治りがきわめて早く、灼熱の砂漠で生きながら寿命が60年もあります。その驚異的な生命力に着目した塚本教授は、「すさまじい免疫力の持ち主で、抗体を作る力も強い」と見て研究し、卵から大量の抗体を取り出す技術を開発したそうです。

 その抗体をスプレーに入れて、マスクに吹き付けると、病原体から完全に防護してくれるというものでした。駝鳥の卵は病原体への抵抗力が強く、その上、鶏の卵の20~25倍の大きさがあり、卵1個からマスク8万枚分の抗体がとれるそうです。また、卵1個の抗体からインフルエンザ検査薬が2万人分作れるとも報道されていました。

 先月、韓国で猛威を振るったmers(マーズ)の抗体を、駝鳥の卵を使って精製することに成功しました。現在、有効性、安全性などを検証中だということですが、韓国などにスプレー剤にして既に送られたのだそうです。昨年大流行したエボラ出血熱のウイルスを不活性化する抗体の精製にも成功して、実用化されています。

 駝鳥は年間100個近い卵を産むそうで、しかも前述の通り、駝鳥の寿命は60年以上、産卵期間も40年ほどあることから、同質の抗体を長期間にわたって安定供給出来ることも強みということでした。また、肉は高タンパク低脂肪で健康志向で需要が高まり、世界各地に飼育農場が増加しているそうです。

 勿論、脅威のウイルス対策やメタボ対策という人間の健康保持のために、神が駝鳥を創造されたわけではないでしょう。とはいえ、駝鳥のお蔭で、私たち人間の命が守られるというのは、確かなことです。神が造られた被造物の多様さ、しかも、その一つ一つに注がれている配慮の細やかさには、目を見張るばかりです。

 神がヨブに創造の神秘を語られるのは、被造物一つ一つに込められている神の深い御心に気づかせるためでしょう。そして、それによって、ヨブの上にも神の特別な配慮があることを気づかせるためだったのではないでしょうか。

 慈しみ深い神に信頼し、すべてをその御手に委ねることの出来る者は幸いです。「お前たちは、立ち帰って静かにしているならば救われる。安らかに信頼していることにこそ力がある」(イザヤ書30章15節)と言われているとおりです。

 主よ、御名はいかに力強く、全地に満ちていることでしょう。その威光をたたえます。月も星も、あなたが配置なさったもの。そのあなたが私たちを御心に留めてくださるとは、人間は何者なのでしょう。測り知れない恵みに与っていることに感謝し、心を尽くしてその御愛を語り伝えます。全世界に主イエスの平和が豊かにありますように。 アーメン