「わたしのもとにとどまっていなさい。恐れることはない。わたしの命をねらう者はあなたの命をもねらう。わたしのもとにいれば、あなたは安全だ。」 サムエル記上22章23節 

 サウルを恐れて逃避行を続けているダビデですが、彼のもとに人が集まり始めました。

 先ず、ダビデがアドラムの洞窟に難を避けていることを聞いた兄弟や父の家の者が皆、ベツレヘムから下って来ました(1節)。ダビデがサウル王から命を狙われているということは、兄弟や家族、親族にとっても大きな脅威だったでしょう。実際に、彼らにもサウルの手が伸びていたのかも知れません。

 続いて、「困窮している者、夫妻のある者、不満を持つ者」が集まって来ました(2節)。サウルのもとでは力を発揮することが出来なかった者、役に立たなかった者が、ダビデのもとで整えられ、やがて大きな戦力となっていきます。その数は、既に400人にもなりました。

 そして、ダビデは両親をモアブの王に託します(3節)。おそらく、ダビデの両親は年老いていたので、ダビデと共にサウルを避けて荒れ野を旅するのは困難なことだったと考えられます。また、サウルの兵と戦いを交えることになれば、表現が適切でないかも知れませんが、ダビデの両親が足手まといになってしまうでしょう。

 両親をモアブの王に託したということは、そのとき、モアブの王とダビデの間には、友好的な関係が築かれていたわけです。モアブは、ダビデの曾祖母ルツの故郷ですし(ルツ記1章4節、4章17節)、そもそも、モアブは、イスラエルの父祖アブラハムの甥ロトの子孫です(創世記19章37節)。

  ところが、ダビデは王となった後、モアブを征服して多くのモアブ人を処刑して、モアブを属国としました(サムエル記下8章2節)。モアブに対するダビデのこの態度の変化について、モアブ王に託したダビデの両親が殺害されたためだったと、ユダヤ教の伝説は伝えています。

 アドラムの洞窟にいたダビデのところに預言者ガドがやって来て、「要害にとどまらず、ユダの地に出て行きなさい」と指示を与えます(5節)。ダビデは、ガドの言葉に従って、すぐに行動を起こしました(5節)。

 その後、祭司アヒメレクの息子アビアタルが、ダビデのもとに逃れて来ます(20節)。アヒメレクとその父アヒトブの家の者たち、「亜麻布のエフォドを身に着けた者」、即ち祭司が「85人」(18節)、無実の罪でサウルに殺され(11節以下)、祭司の町ノブの住民も家畜も、皆殺しにされました(19節)。アビアタルがただ一人、逃れることが出来たのです。

 その悲劇の原因は、昨日学んだとおり、ダビデがその種を播いたのです(21章参照)。おのが非を認めたダビデは(22節)、冒頭の言葉(23節)にある通り、アビアタルの保護を約束します。

 一方、サウル王は、神の命に背いたため、先ず預言者サムエルが離れました(15章35節)。そして、ダビデが油注がれた結果、主の霊がサウルを離れます(16章14節)。そして、誰よりも勇敢に戦って武勲を立て、名声を得た家臣ダビデを妬み、殺そうとしたので(18章30節)、当然のことながら、ダビデとその家の者が離れて行きました。

 その上、サウル王の息子ヨナタンは自分自身のようにダビデを愛して契約を結び(18章3節)、ダビデの妻となったサウル王の娘ミカルもダビデを愛していたので、王の命に背いてダビデを逃がしました(19章11節以下)。

 そして、ダビデに味方してサウルに刃向かわせたというかどで、祭司一族とその町の者を皆殺しにします(13,16,18節)。そのようなことをして、神を味方に付けることは出来ません。神に敵対しながら、今後、外敵に対してどのように立ち向かうつもりなのでしょう。

 こうして、サウルが王座にしがみつこうと躍起になればなるほど、神に背いて神に退けられるという結果を招いていきます。サウルに不満を持つ者がダビデのもとに身を寄せるようになるのも、主の霊が彼のもとを去り、神の恵みを失ってしまっているからです。

 こうして、サウル王が失ったものを、ダビデが従えるようになっていきます。主がダビデと共におられ、神の国イスラエルを立て直そうとしておられるのです。そこに神の癒しがあり、救いがあります。ダビデがアビアタルに、「わたしのもとにいれば、あなたは安全だ」と言っていますが、逃避行中のダビデがここでアビアタルの安全を保証出来るのは、勿論ダビデ自身の力などではなく、主なる神がダビデと共におられるからです。

 神の御言葉に背いたサウルから主の霊が去ったように、主を信頼し、その御言葉に従おうとしないなら、道端に落ちた種を鳥が来て食べたごとく(マルコ4章4,15節)、私たちも恵みを失うでしょう。私たちと共に働いて、万事が益となるようにしてくださる主を仰ぎ、信じて御言葉に耳を傾けましょう。

 主よ、私たちは心を確かにして、あなたに賛美の歌を歌います。あなたの慈しみは大きく、天に満ち、あなたのまことは大きく、雲を覆います。このクリスマスに、神よ、天の上に高くいまし、栄光を全地に輝かせてください。地の上には、キリストの平和が豊かにありますように。 アーメン