「千人隊長は百人隊長二人を呼び、『今夜9時カイサリアへ出発できるように、歩兵200名、騎兵70名、補助兵200名を準備せよ』と言った。」 使徒言行録23章23節

 千人隊長は、パウロの罪状が知りたいと、最高法院を召集しました(22章30節)。最高法院は、サドカイ派出身の祭司グループ、書記、賢者と呼ばれるファリサイ派、そして有力な一般市民から構成されていました。福音書には、「祭司長、律法学者、長老」と記されています(マルコ11章27節など)。アリマタヤのヨセフは、一般市民グループの一員だろうと想像されます(同15章43節など)。

 最高法院がファリサイ派とサドカイ派で構成されているのを見て、パウロは、「わたしは生まれながらのファリサイ派です。死者が復活するという望みを抱いていることで、わたしは裁判にかけられているのです」と言いました(6節)。すると、ファリサイ派とサドカイ派の議員の間に論争が生じ、法院が分裂したと報告されています(7節)。

 復活や天使の存在などで両派の間に対立があることはよく知られていました。けれども、キリスト教徒を迫害することにおいて、利害は一致していたと思われます。また、律法に背くことを教えているという点では、ファリサイ派のほうがパウロに対して厳しい態度を持っていたと思われます。

 それなのに、「この人には何の悪い点も見いだせない。霊か天使かが彼に話しかけたのだろうか」と言っています(9節)。本当にそんなことを言ったのかと疑いたくなるような状況です。かくて、議論が激しくなったので、またもや千人隊長はパウロを兵営に連れて行くように命じなければならなくなります(10節)。

 この背後に、神の手があったことが、11節の、「勇気を出せ。エルサレムで私のことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」という言葉で示されます。ローマで証しをしなければならないということは、ローマに着くまで、パウロは守られるということを意味するからです。

 一方、最高法院でパウロに対して極刑の判決を期待していた者たちは、それが適わないことを知って暗殺を企てます(12節以下)。ところが、「パウロの姉妹の子」、つまり、パウロの甥がそれを聞きつけ、暗殺計画について、千人隊長に知らせます(16節以下、20,21節)。

 千人隊長は、パウロの安全を図るため、身柄をエルサレムから総督フェリクスのいるカイサリアに移すことにします。それは、パウロの罪状が異邦人には理解しがたいユダヤ教の信仰の問題であることから(29節)、取り扱いを総督に委ねるということでしょう。そして、ローマ帝国の市民権を持つパウロに対する暗殺の陰謀を知ったので(27,30節、22章25,28節)、それを実行したのでしょう。

 それで、百人隊長二人を呼び、護送の準備をさせます(23節)。パウロ一人の護送のために、470人という、エルサレムに駐屯している部隊の半数近くを動員するというのは、陰謀を企てている40名余の者たちに対応してのことでしょうが、何としても護送を成功させるということでしょう。

 護送部隊のうち歩兵と補助兵は、襲われる危険のあるアンティパトリスまでの60㎞を同行し(31節)、そこからさらに40㎞のカイサリアまでは、騎兵たちがパウロを馬に乗せて護送しました(32節)。ただ、エルサレムから60kmの距離を、400人の歩兵部隊が夜中に出発して、その「夜のうちに」アンティパトリスに到着するというのは、無理があるように思われます(31節)。あるいは、翌日の夜中にと考えたほうがよいのかも知れません。
 
 いずれにせよ、パウロはローマ兵に守られながら、エルサレムから100km以上離れたカイサリアに無事到着しました。かつて、大祭司からローマ総督の下に身柄が移された主イエスは、ローマ兵によって鞭打たれ、十字架につけられましたが、今パウロは、彼を亡き者にしようというユダヤ人から、ローマ兵の手によって守られています。

 今はまだ、どのようにしてローマまで行くことになるのか全く分かっていません。しかし、パウロがローマで証しをするために、一方ではユダヤ人らの訴えや陰謀などを利用しながら、一方ではローマ市民権を持つパウロを守るというローマ兵らを用いて、エルサレムからカイサリアへ、そしてやがてローマへと、神ご自身が時をはかり、その御旨を着実に実行しておられるのです。

 聖なる主よ、私たちはあなたのご計画のすべてを知っていないので、目の前に起こる様々な出来事に振り回されてうろたえていますが、あなたはそれらすべてを、私たちの弱さや欠点さえも益として下さる、プラスに変えて下さるお方であることを信じて、感謝致します。委ねられている使命を悟り、御旨に従って歩むことが出来ますように。アーメン