「この日、ハマンはうきうきと上機嫌で引き下がった。しかし、王宮の門にはモルデカイがいて、立ちもせず動こうともしなかった。ハマンはこれを見て、怒りがこみ上げてくるのを覚えた。」 エステル記5章9節


 王妃エステルとモルデカイとのやりとりから「三日目」(1節)、即ち、三日三晩断食することにして(4章16節)、それを実行した最終日のこと、エステルは王妃の衣装をまとい、決死の覚悟で王宮の内庭に入りました(1節)。

 王宮の入り口に向かって座っていた王が、庭に立っているエステルを認め、手にしていた金の笏を差し伸べました(2節)。それは、エステルを側へ来るように促す合図です。「満悦の面持ちで」とは、エステルの登場を王が喜んだということで、法を犯して王に近づいたエステルの行為が許されたことを意味します。

 エステルがそのような振る舞いに及んだからには、何か重要な願いがあるに違いないと考えた王は、「王妃エステル、どうしたのか」と尋ね、「願いとあれば国の半分なりとも与えよう」と語ります(3節)。これは、ヘロデの誕生日に娘サロメが踊りをおどって喜ばせたとき、「欲しいものがあれば何でも言いなさい」といって約束したのと同じ言葉であり(マルコ6章23節)、王はエステルの登場を喜び、どんな要求でも答えてやりたいと考えているわけです。

 エステルが王の前に立ったのは、同胞ユダヤ人の救済を王に嘆願するためです。けれども、「願いとあれば国の半分なりとも与えよう」という言葉を聞いたエステルは、その願いをすぐに切り出そうとはしません。「今日私は酒宴を準備いたしますから、ハマンと一緒にお出ましください」と願います(4節)。

 王とハマンは、ユダヤ人絶滅の勅書を帝国全土に発布した後、酒を酌み交わしていました(3章15節)。その二人を、ユダヤ人王妃エステルが自ら設けた酒宴に招いたのです。王はその願いを受け、早速ハマンと共に酒宴に赴きました(5節)。

 王は、その席で王が再度、「何か望みがあるならかなえてあげる」と約束します(6節)。王妃の決死の願いが、ハマンと酒宴を開くだけのこととは考えられなかったのでしょう。すると、もう一度酒宴を開くので、ハマンと一緒に出席するように、そして、そこで仰せのとおり私の願いを申し上げますと、エステルは答えました(8節)。

 王と王妃のプライベートな酒宴に2度も続けて招かれたハマンは、もう有頂天でした。帰宅して、親しい友達を招き、妻を同席させて、自分の財産や大勢の息子たちについて、また王から与えられた栄誉、自分の栄進について、自慢をします(10,11節)。さらに、王妃から特別な酒宴に招かれたことを語り聞かせます(12節)。冒頭の言葉(9節)に、「うきうきと上機嫌で」とありますが、まさしく、この上もなく幸せな気分だったことでしょう。

 しかし、彼の心に刺さるとげがあって、その気分をぶち壊します。それは、ユダヤ人モルデカイの存在でした。ハマンは上機嫌で王宮から下がろうとして、門のところでモルデカイを見ました。モルデカイは敬礼しないばかりか、動こうともしません。それを見て、心に怒りがこみ上げてくるのを覚えました(9節)。

 人は、善事よりも悪事に心とらわれるものです。王の信任を得、王妃の特別な招きを受けて最高の気分なのですが、「モルデカイを見るたびに、すべてがわたしにはむなしいものとなる」と、ハマンは妻や友らに訴えました(13節)。

 それに対して、妻たちの、「50アンマもある高い柱を立て、明朝、王にモルデカイをそれにつるすよう進言してはいかがですか」との勧めに気をよくしたハマンは、早速実行に取りかかりました(14節)。ユダヤ人絶滅計画は、そもそも、モルデカイが自分に敬礼しなかったことに端を発していることなので、11ヶ月後の計画実施を待たずして、モルデカイを殺してしまおうというわけです。

 しかしながら、王妃エステルもユダヤ人であり、モルデカイはその養父であり、後見人となっている人物です。このつながりをハマンが知っていれば、どうだったでしょう。自分の計画が、自分を最高に気分に導いてくれているエステルを殺そうとすることだと知れば、どうでしょうか。知らないからこそのハマンの行動なのです。

 けれども、「人を呪わば穴二つ」です。彼は自分の蒔いたものを刈り取らなければなりません(ガラテヤ書6章7節)。主イエスは、「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる」(マタイ7章1,2節)と言われました。

 謙って絶えず神の御言葉に聴き、御旨に従って歩みましょう。

 主よ、エステルは真剣に祈り、神の力に押し出されて行動しました。そこに、主の守りと導きがありました。私たちも、神の国と神の義を第一に求めて御前に進みます。御旨を行わせて下さい。御名が崇められますように。 アーメン