「ヨヤダは、主と王と民の間に、主の民となる契約を結び、王と民の間でも契約を結んだ。」 列王記下11章17節
南ユダの王アハズヤの母アタルヤは、北イスラエルの王アハブとその妻イゼベルの娘です。彼女が南ユダの王ヨラムの妻となったため(8章18,28節)、彼女を通して、ユダにもバアル信仰が持ち込まれ、推進されました(8章18,27節)。そのため、エリヤの預言のとおり、アハブの血を受け継ぐアタルヤの息子アハズヤはイエフに殺され、その一族にも難が及ぶことになったのです(9章27節以下、10章12節以下)。
皇太后アタルヤは、息子アハズヤの死を知り、ただちに王族をすべて抹殺しようとします(1節)。それはなんと、自分が南ユダ王国の支配者となるためで、邪魔になる者を排除しようとしたのです。そうしなければ、アハブ家の一員である自分の命が危ないということと、南ユダにおいてバアル信仰を守りたいと考えたのではないかと想像します。
けれども、ただ一人、アハズヤの子ヨアシュだけは、ヨラム王の娘でアハズヤの妹ヨシェバによって救い出されました(2節)。ヨラム王の娘でアハズヤの姉妹ということは、アタルヤの娘でもあります。王族の抹殺という意味では、ヨシェバもその対象なのです。
歴代誌下22章11節によれば、ヨシェバは祭司ヨヤダの妻となっていました。だから、バアル信仰推進者の母とは、生き方を異にしていて、ヨアシュ王子を母アタルヤの手から救いたいと考えたのでしょう。「乳母と共に」というので(2節)、ヨアシュはまだ生後間もない乳飲み子でした。そこで、アタルヤが国を支配していた6年間、主の神殿に隠して、養育していたわけです(3節)。
7年後、機会を待っていた祭司ヨヤダは、アタルヤに対抗するため、カリ人と近衛兵からなる百人隊の長たちを味方につけ、ヨアシュを王とする組織を固めます(4節以下)。カリ人とは、小アジア南西部カリアの住民で、傭兵としてよく知られていたそうです。こうして周囲が固めることが出来たので、ヨヤダはヨアシュに冠をかぶらせ、掟の書を渡しました(12節、申命記17章18,19節)。
人々はヨアシュに油を注いで王とします。民は、「王万歳」と歓呼して、新しい王を迎えました(12節)。そして、女王アタルヤは殺されます(13節以下、16節)。ただし、列王記の記者は、アハズヤの死後、王族を抹殺して自ら王位についたアタルヤを、南ユダの王として認めてはいないようで、一度も「王」と呼びません。前述のとおり、アタルヤがヨラムの后となってから、南ユダを主に背かせて来たことが、その要因でしょう。
ヨアシュが即位したのは、7歳のときです(12章1節)。だから、主の祭司ヨヤダが摂政として指揮をとり、冒頭の言葉(17節)のとおり、もう一度、主とユダの王及び民との間に「主の民」となる契約を結ばせ、さらに、王と民との間にも、保護と忠誠の契約を結ばせました。この契約に基づき、民はバアル神殿を破壊し、像を徹底的に打ち砕きます(18節)。これは、主を愛し、主にのみ仕えるというユダの民の信仰の証しです。
それから、ヨアシュを神殿から王宮に導き、王座に着けました。かくて、主なる神はエルサレムに平和をもたらされたのです(20節)。
イザヤの預言に、「お前たちは、立ち帰って、静かにしているならば救われる。安らかに信頼していることにこそ力がある」という言葉がありますが(イザヤ30章15節)、祭司ヨヤダの指導と、その教えに従ったヨアシュ王の働きによって(12章3節)、南ユダは悔い改めて主の前に立ち帰り、主に信頼する生活に戻って、神の恵みに与ることが出来たのです。
こうして、北イスラエルでは王イエフにより(9~10章)、南ユダでは祭司ヨヤダの指導によって、国中でバアルが取り除かれ、ダンからベエルシェバまで主を信じ、主にのみ栄光を帰す体制が回復されました。
けれども、大切なのは国家体制ではありません。イスラエルの民一人一人が、主を神とするのか、バアルを神とするのか、はっきりさせておかなければならないということです(列王記上18章21節)。その双方に仕えることは出来ません。
神はただお一人であると宣言している聖書が正しければ(申命記6章4節、ローマ書3章30節など)、他に神々がおられるはずはなく、聖書が偽りであるなら、聖書の神も偽りだからです。
主イエスも、二人の主人に仕えることは出来ない、と言われました(マタイ6章24節)。私たちも、主イエスを信じてバプテスマを受け、主と新しい契約を結んだキリスト者(クリスチャン)として、日々主の御言葉に耳を傾け、主にのみお従いする者とならせていただきましょう。
主よ、神に逆らう者の計らいに従って歩まず、罪ある者の道に留まらず、傲慢な者と共に座らず、主の教えを愛し、その教えを昼も夜も口ずさむ幸いを、日々豊かに授けてください。主の恵みと平安がこの地に、そして世界中に豊かにありますように。 アーメン